遠い国の子供

 ぼくのしょうらいの夢は、えらい軍人になることです。
 なぜえらい軍人になりたいのかというと、パンが毎日たべられるからです。
 ぼくは、おかあさんといもうとの3にんぐらしでした。パンが『はいきゅう』されるのは、まいしゅう火よう日だけで、それも3つだけです。いもうとがうまれるまえは、まいにち3つのパンが『はいきゅう』されていました(おとうさんがまだ生きていたので、そのころも、かぞくは3にんでした)。
 このあいだ、いもうとが死んで、ぼくのかぞくはふたりだけになったので、パンは2つになりました。いもうとは6さいだったのですが、赤ちゃんみたいに小さかったです。いもうとは、うまく歩くことができませんでした。体がほそすぎて、頭がおもかったせいです。
 これが、ぼくのかいた、いもうとの絵です。

いもうとはおかあさんの足とおなじくらいの大きさです。

 ぼくは、おかあさんといっしょにいもうとを土にうめてやりました。
 ないているおかあさんに、ぼくはしょうらいえらい軍人になって、だれも死なないようにしてあげるよ。と、いいました。おかあさんは、えらい軍人になるのはむずかしい。と、いいました。だからもし軍人になれなかったら、ぼくは『ぎゆうぐん』に入ろうと思います。『ぎゆうぐん』は、『めいよある死』を はたした人のかぞくを、一生めんどうみてくれるそうです……



 新しく買ったばかりの液晶テレビの画面が、不意にまっくらになった。
「メシ食いながら見る番組じゃねえよ」
 リモコンを置き、彼は夕飯のコロッケを頬張った。
「可哀想ね、あの子たち」
「そうだな。けど、俺らに何ができるわけでもなし」
 私は彼の顔をじっと見た。それから、彼に倣
(なら)ってコロッケを頬張ろうとした。しかし、私の皿は既にからっぽだったので、それは適わなかった。
「そうね。遠い国の事だものね」


 遠いのは、距離ではなく、私たちの心だ。





2004.2.29


もどる