ちいさなもりのむし 
4.
 雨水(あまみず)をはねながら、(あか)(なが)ぐつが(ちか)づいてきます。
 フルールが(たお)れている(まえ)で、その(なが)ぐつはとまり、黄色(きいろ)(あま)ガサがふわりと()りてきました。
 (ちい)さな(おんな)()が、(あま)ガサを片手(かたて)に、フルールの(まえ)でしゃがみこんだのです。
「おとうさん、おとうさん。こんなところにちょうちょがいるよ」
 (おんな)()が、うしろをふりかえって(こえ)をあげました。
 (くろ)いカサと(くろ)いクツの大人(おとな)は、(おんな)()(ゆび)さす(みず)たまりをのぞきこみました。
「やあ、これはめずらしい。(もり)にしかいないはずのギフチョウだ」
「こんなところにいたら、ふまれちゃうよ。(もり)(かえ)してあげようよ」
「さて、これはもう()んでいるんじゃないのかな。(ちょう)(みず)にぬれるといけないんだから」
「そんな。……どうして(あめ)ふりなのに、(まち)()てきたのかしら。
ねえ、お(とう)さん。やっぱり(もり)(かえ)してあげようよ。きっと、(かえ)りたいって(おも)っているはずだもの」
(いま)からかい? この大雨(おおあめ)のなかを」
 お(とう)さんは(おどろ)きます。(おんな)()はうなずいて、両手(りょうて)でそっとフルールを、ちょうちょをすくい()げました。
()こう。すぐに()けるでしょう?」
 しかたないというようすで、お(とう)さんは(おんな)()()れて、(もり)へと()かいました。


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