◆ ちいさなもりのむし ◆
4.
雨水をはねながら、赤い長ぐつが近づいてきます。
フルールが倒れている前で、その長ぐつはとまり、黄色い雨ガサがふわりと降りてきました。
小さな女の子が、雨ガサを片手に、フルールの前でしゃがみこんだのです。
「おとうさん、おとうさん。こんなところにちょうちょがいるよ」
女の子が、うしろをふりかえって声をあげました。
黒いカサと黒いクツの大人は、女の子の指さす水たまりをのぞきこみました。
「やあ、これはめずらしい。森にしかいないはずのギフチョウだ」
「こんなところにいたら、ふまれちゃうよ。森へ返してあげようよ」
「さて、これはもう死んでいるんじゃないのかな。蝶は水にぬれるといけないんだから」
「そんな。……どうして雨ふりなのに、町へ出てきたのかしら。
ねえ、お父さん。やっぱり森へ返してあげようよ。きっと、帰りたいって思っているはずだもの」
「今からかい? この大雨のなかを」
お父さんは驚きます。女の子はうなずいて、両手でそっとフルールを、ちょうちょをすくい上げました。
「行こう。すぐに着けるでしょう?」
しかたないというようすで、お父さんは女の子を連れて、森へと向かいました。
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