ちいさなもりのむし 
3.
 フルールはどうしたらいいのか(かんが)えながら、(かわ)(くだ)ってゆきました。
 ヌシ(さま)は、(ひと)(もり)一部(いちぶ)だということを(わす)れているといいます。
 それなら、(ひと)(もり)のことを(おも)いだしてくれたら、ヌシ(さま)(あめ)をふらさなくなるのでは……。
 そう、フルールは(おも)いつきました。
 われながらよい(かんが)えだと、うれしくなったフルールは、どんどん(かわ)(くだ)り、人里(ひとざと)へおりてゆきました。

 ちょうどよい具合(ぐあい)に、(かわ)のそばには、あまがっぱを()(ひと)がたくさんいます。
「みなさーん、きいてくださ〜い」
 大声(おおごえ)()びかけますが、人々(ひとびと)は、(かわ)(ゆび)さして(なに)ごとか(はな)()ったり、いそがしそうに(うご)(まわ)ったりして、ちっともフルールの(こえ)()づいてくれません。
 (まち)のなかへ()っても(おな)じです。だれもかれもがいそがしそうで、フルールの(こえ)はおろか、姿(すがた)にさえも()づいてくれないのです。
 こんなことで、どうやって(もり)のことを(ひと)(おも)いだしてもらえるというのでしょう?

 へとへとになったフルール。(かな)しくて()きたくなってきました。
 おまけに、ずぶぬれになった(ふく)では、(おも)くて()ぶことができません。
 (からだ)(しん)まで(つめ)たく、(さむ)くて仕方(しかた)がありません。

―― このままいきだおれてしまうのかしら…。
―― (もり)(かえ)ることもできずに……

 フルールは、()(まえ)がぼやけてきて、
 そのまま ぱったりと(たお)れてしまいました。

 アスファルトの(うえ)(みず)たまりの(なか)
 (あめ)にうち()とされたそのすがたは、
 黄色(きいろ)(くろ)じまの(はね)をもつ、ちょうちょでした。


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