◆ ちいさなもりのむし ◆
3.
フルールはどうしたらいいのか考えながら、川を下ってゆきました。
ヌシ様は、人が森の一部だということを忘れているといいます。
それなら、人が森のことを思いだしてくれたら、ヌシ様も雨をふらさなくなるのでは……。
そう、フルールは思いつきました。
われながらよい考えだと、うれしくなったフルールは、どんどん川を下り、人里へおりてゆきました。
ちょうどよい具合に、川のそばには、あまがっぱを着た人がたくさんいます。
「みなさーん、きいてくださ〜い」
大声で呼びかけますが、人々は、川を指さして何ごとか話し合ったり、いそがしそうに動き回ったりして、ちっともフルールの声に気づいてくれません。
町のなかへ行っても同じです。だれもかれもがいそがしそうで、フルールの声はおろか、姿にさえも気づいてくれないのです。
こんなことで、どうやって森のことを人に思いだしてもらえるというのでしょう?
へとへとになったフルール。悲しくて泣きたくなってきました。
おまけに、ずぶぬれになった服では、重くて飛ぶことができません。
体は芯まで冷たく、寒くて仕方がありません。
―― このままいきだおれてしまうのかしら…。
―― 森へ帰ることもできずに……
フルールは、目の前がぼやけてきて、
そのまま ぱったりと倒れてしまいました。
アスファルトの上、水たまりの中。
雨にうち落とされたそのすがたは、
黄色に黒じまの羽をもつ、ちょうちょでした。
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