◆ ちいさなもりのむし ◆
1.
たくさんの雨がふりつづいていました。
フルールは木の“うろ”からあたまをのぞかせ、しんぱいそうに空を見あげています。
うっそうと生い茂る緑は、雨にぬれてほほえんでいるようですが、フルールはしょんぼりしていました。
「いつになったら、やむのかなぁ」
つぶやきは、雨粒に打たれて地面へと落ちてゆくばかり。
わた毛のようにふわふわのお洋服は、湿気を吸ってだいなしですし、お気に入りの背中の大きなリボンだって、なんだかさえない感じです。
「ホント、いやになっちゃう」
フルールが雨のしずくをはたく仕草でリボンを振ると、しずくと一緒にリボンに付いた金の粉がきらめきました。
そして、ぴょんとはねると、フルールはひらひらと飛んで、木のねもとにいるお母さんのもとへおりてゆきました。
フルールのお母さんは、ハート形の葉っぱをもつ、緑のひとです。
ちっとも似ていませんが、フルールがうんと小さいときから育ててくれたひとなので、やっぱりお母さんだと思っているのです。
「おかあさん、どうして雨がやまないの?」
フルールがたずねると、緑のお母さんはおっとりとした声で言いました。
「そうねえ。森のヌシ様におききしないと、わからないわね」
「もりのぬしさま?」
「ヌシ様は、水をつかさどるおかたですよ。森に水はなくてはならないものですからね」
つづけて緑のお母さんは言います。
「どれだけ雨をふらせるのか決めるのも、ヌシ様のおしごとなんですよ」
「へ〜え、そうなんだ。それじゃあわたし、ヌシさまに“雨をふらせるのをやめてください”ってお願いしてくる」
いまにも飛んでいきそうになったフルールをしんぱいして、緑のお母さんは声をかけます。
「でも、フルール。この雨のなかを飛びまわったら、体が冷えてしまうわ」
「でもね、お母さん。このままずっと雨がやまなかったら、わたし、お友だちを見つけることもできないもの」
ふりかえったフルールは、つづけて言います。
「わたしはわたしとおんなじ姿をしたお友だちを見つけて、そうしてお母さんのもとへ戻ってくるの。そうしないといけないのよ」
フルールの言うことはもっともだったので、お母さんはうなずくほかありませんでした。
「できることなら、ついていってやりたいけれど……。わたしはここを動くことができません。くれぐれも気をつけていくのですよ」
そう言って緑のお母さんは、ヌシ様のすみかをフルールに教えてくれました。
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